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12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2008/04/30(水) 10 16 33.26 ID owgHTflm0 涼宮ハルヒの憂鬱 ある男子にほれた主人公は精神的な持病によってアプローチすることができない。 だが、変な奴らを集めてじょじょに接近していく。 35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2008/04/30(水) 10 33 05.01 ID Eyt7IFwN0 涼宮ハルヒの憂鬱 主人公涼宮ハルヒがいじめられまくって憂鬱になってしまう。 それを見かねた友達がSOS団を立ち上げ、いろいろあってだんだん元気になる 113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/30(水) 11 26 48.60 ID 4+jRQ26x0 雨宮ハルヒの憂鬱 学生ハルヒに破壊されそうになっている世界を救うことをコンセプトに ヒロインミクルのコスプレを愛でるアニメ 198 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/30(水) 12 33 17.27 ID JaCO1CRtO ハルビン ハルヒがなんか宇宙人の長門を倒す話 465 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/30(水) 15 46 34.11 ID SoTC0tpT0 「涼宮ハルヒの憂鬱」 馬鹿なクラスメイトに辟易しながらも日々の日常を贈る 厨二病の少女を主人公にした風刺の強い青春群像ドラマ 478 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/30(水) 15 54 10.95 ID LAYfMD3rO 涼宮ハルヒの憂鬱 主人公涼宮ハルヒは11歳の女の子 体は女心は男の葛藤の毎日に嫌気がさしてきた冬、涼宮は男に恋をしてしまう 体は女なのだから正常に思われるが心は男 何と切り出せば良いのか分からずに悶々と過ぎ行く日々を綴るラブストーリー 633 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/30(水) 18 49 02.06 ID blR5Fl6RO ハルヒ 宇宙人がハルヒをおそってSOSする? 662 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/30(水) 19 07 14.51 ID /ityZHeq0 涼宮ハルヒの憂鬱 高校の国語教師でもあるハルヒ(26歳)が主人公。ゆとり教育によって荒廃した教育現場が舞台。 無気力(無関心)でぶつぶつと独り言や奇行を繰り返す男子生徒キョンや、 父親からの性的暴力によって心を病み、援助交際にふけるみくる、 自閉症で、やや虚言癖がある長門ゆき。 現代社会が抱える闇を浮き彫りにし、これら問題ある生徒たちに対して ハルヒが体を張ってぶつかっていき、共に解決していくことで人間的にも成長していく物語。 667 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/30(水) 19 12 33.68 ID /ityZHeq0 662 書いてて思ったが、ごくせんかGTOとか金パチ先生とかこんなんかな? 実は全部見たことwww 690 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/30(水) 21 09 46.32 ID OvnsEnhz0 667 金八の場合 妊娠した女子生徒 優等生の仮面をかぶった学級の裏ボス 性同一性障害の女子生徒 殺人犯の子 などの濃いメンツが勢ぞろい 807 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/01(木) 00 12 35.04 ID FWg895+yO ハルヒ 普通の高校生活 修学旅行とかやってそう 809 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/01(木) 00 28 46.78 ID bY+NeWAb0 ハルヒ うららかな春の日に、ボクは彼女と出会い恋をしました。 こそばゆい恋愛アドベンチャー、今春発売。 811 名前:全部繋げてみた[] 投稿日:2008/05/01(木) 00 53 27.60 ID weD9CH8N0 高校の国語教師でもあるハルヒ(26歳)が主人公。 ゆとり教育によって荒廃した教育現場が舞台。 無気力(無関心)でぶつぶつと独り言や奇行を繰り返す男子生徒キョンや、 父親からの性的暴力によって心を病み、援助交際にふけるみくる、 自閉症で、やや虚言癖がある長門ゆき。 現代社会が抱える闇を浮き彫りにし、これら問題ある生徒たちに対して ハルヒが体を張ってぶつかっていき、共に解決していくことで人間的にも成長していく物語。 ちなみに主人公涼宮ハルヒは11歳の女の子。 修学旅行とかやりつつ普通の高校生活を送るが、 体は女心は男の葛藤の毎日に嫌気がさしてきた冬、男に恋をしてしまう。 体は女なのだから正常に思われるが心は男、 何と切り出せば良いのか分からずに悶々と過ぎ行く日々を綴るラブストーリー。 ほれた男子にハルヒは精神的な持病によってアプローチすることができない。 だが、変な奴らを集めてじょじょに接近していく。 しかし、ハルヒはいじめられまくって憂鬱になってしまう。 それを見かねた友達がSOS団を立ち上げ、いろいろあって ハルヒはだんだん元気になる。 馬鹿なクラスメイトに辟易しながらも日々の日常を贈る 厨二病の少女を主人公にした風刺の強い青春群像ドラマ。 うららかな春の日に、ボクは彼女と出会い恋をしました。 こそばゆい恋愛アドベンチャー、今春発売。 861 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/01(木) 09 37 32.25 ID QDMJUxLmO 【涼宮ハルヒの憂鬱】 最初朝倉さんが好きだったキョンは涼宮さんの助力を得て、 朝倉さんと付き合えることになったけど、 そのうちキョンは朝倉さんより、涼宮さんのほうが良いと言い出して まんざらでもない涼宮さんはなんとなくOKして 涼宮さんはキョンを受け入れてしまいます。 キョンと涼宮さんはそろって朝倉さんをシカト どんどん壊れていく朝倉さん。 そのうちに涼宮さんが妊娠したとか言い始め 涼宮さんがうざくなるキョン キョンは涼宮さんをほっぱらかして、学友の長門さんや朝比奈さんや、 あまつさえ自分の妹とも関係を持っていきます。 ついに、キョンは狂った涼宮さんに刺し殺されてしまいました。 そしてその後、涼宮さんは、朝倉さんに腹を裂かれて殺されてしまうのです。 「中に誰もいませんよ」 朝倉さんは切り取ったキョンの頭を胸に抱いて ついに一緒になれましたとさ。 おしまい 666 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/30(水) 19 11 15.15 ID 9VU3H/UeO 涼宮ハルビンの憂鬱 とある中国のハルビンという少女が餃子拳を会得し戦い続けるバトルマンガ 14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/01(木) 16 50 00.26 ID 2ko/FyiEO ハルヒがでるやつ なんかロリな女がたくさん戯れて歌を歌いまくり男をたぶらかす作品。多分へんな髪色のやつがいっぱい出ると思う。 15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/01(木) 16 51 19.07 ID 08L2KDL3O 14 みたいな 40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/01(木) 19 28 20.33 ID 6NbFjDI40 絶対 内容知ってるのに ワザと変な妄想してる奴いるだろ 41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/01(木) 19 32 05.17 ID xZPLM/4mO 40 ハルヒなら見た事あるけど、想像とかなり違っててびっくりしました。 86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/01(木) 23 13 02.27 ID gYtCKwg7O ハルヒの憂鬱 中2のハルヒという名前の女のやる気が究極になく、何をするにもネガティブ もうクソ暗い漫画
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とある喫茶店。 女二人が向かい合って座っている。 「悪いけれども、今日は、男性を相手にするときと同じ口調で話させてもらうよ。そうしないと、平静を維持できそうにもない。僕は、涼宮さんとは違って、強い人間ではないのでね」 佐々木の発言に、涼宮ハルヒは黙ってうなずいた。 「では、何から話そうか?」 「キョンのこと、どう思ってる?」 涼宮ハルヒの単刀直入な質問に、佐々木はあっさり答えた。 「好きだった。……うん、そう、過去形だよ。いや、現在進行形の部分が全くないといえば嘘にはなるだろうけど、もう、諦めはついている」 「なんで? フラれたわけでもないのに」 「告白すればフラれるのは明らかだ。キョンに異性間の友情という命題について肯定的な確信を抱かせてしまったのは、僕だからね。自業自得というやつさ。キョンにとって、僕は友人以外ではありえない」 「友情が恋愛感情に変わることだって……」 「キョンはそれをあっさり否定したよ。あれはいつものちょっとした世間話だった。今でもはっきり覚えてる。『友情が恋愛感情に変わるなんてありえん。そんなのは物語の世界だけだ』とね」 涼宮ハルヒは、複雑な表情を浮かべた。 「不安になってきたかな? その不安は正しいと思うね。このままじゃ、キョンと涼宮さんの関係も友人関係で確定してしまう。変えたいと思うなら、今すぐ行動することだ。今ならまだ間に合う」 「なんでそう言えるの? キョンは有希やみくるちゃんが好きかもしれないじゃない」 「それはないよ。長門さんも朝比奈さんも、恋愛については意識的に避けようとしている。キョンは他人のそういう態度には敏感だからね。ほとんど無意識的になんだろうけれども」 「でも……」 「キョンの長門さんに対する態度は、父性的な保護者のものだ。これは彼が妹持ちなことが影響してるのだろう」 「それはなんとなく分かるけど」 「そして、朝比奈さんに対しては、二律背反的な感情を抱えてるように思える。憧れと同時にどこか反感めいたものも感じるんだ。反感の原因は分からないけどね」 涼宮ハルヒは、唖然とした。 普段のキョンの態度から見て、朝比奈みくるに対して反感を抱いているなんてことは想像もつかなかったから。 「その二人に比べれば、涼宮さんは無条件で魅力的な女性だよ、キョンにとっては。キョンをこれほどまでに引き付けられたのは、初恋の従姉妹のお姉さんを除けば、涼宮さんが最初だと思う」 「佐々木さんだって、充分魅力的なんじゃないの?」 「世の男性の抱く感情の平均値でいえばそうである可能性も否定はできないかもしれない。しかし、この場合は、キョンにとってどうであるかが問題だ。僕はキョンの恋愛感情的な意味での好みを満たすものを持ち合わせていない」 「キョンの好みって、どんなのかしら? いまいちつかめないのよね」 「これは話に聞くところのキョンの初恋の相手から分析した結果だけどもね。退屈を感じさせる暇すらないほどにパワフルで笑顔のまぶしい女性。簡潔にいえば、そんなところだ」 佐々木は、紅茶のカップに口をつけた。 涼宮ハルヒは、テーブルの上の紅茶のカップに触れようともしない。 「佐々木さんは、本当に告白する気はないの?」 涼宮ハルヒは、にらむように佐々木を見た。 「ないね」 「なんで?」 「キョンははっきりと断って上で、それでもなお変わらぬ友情を維持してくれるだろう。でも、僕はそれに耐えられない。ならば、現状の友人関係を維持し続ける方がベターだ。最初にもいったとおり、僕は涼宮さんほど強い人間ではない」 「なら、私をけしかける理由は何なの? 告白してフラれてしまえばいいなんて思ってるわけ?」 佐々木は苦笑した。 「正直にいえば、そういうどす黒い気持ちもないわけではないよ。でも」 佐々木はここで一度言葉を区切った。苦笑が引っ込み、真剣な表情に変わる。 「これは何よりもキョンのためなんだ。僕にとって彼が大切な友人であることには変わりはない。彼には幸せになってほしいと思う」 涼宮ハルヒのにらみつけるような視線は変わらない。 佐々木は、それを確認してから、付け加えた。 「友情が恋愛に質的転換を遂げうるのは、キョンにとっては、涼宮さん以外に考えられないんだ。彼が今後、涼宮さん以上に魅力的な女性に出会う可能性はほとんどないだろうからね。この機会を逃せば、キョンは一生独身だよ」 「……」 「言っておくけど、キョンの方から告白してくるのを待つのは最悪の選択だ。彼は、異性間の友情に疑問を持ってないし、今の涼宮さんとの関係に不満があるわけでもない。彼が自ら積極的な変化を望む可能性は0だ」 「キョンって臆病者?」 「あながち外れてはないのかもしれないけど、より適切な言い方をすれば、恋愛感情は精神病という教義の熱心な隠れ信者なんだと思うよ。初恋が破れたときの経験がトラウマになってるのだろう」 佐々木は紅茶を飲み干した。 「僕から話せることはこれぐらいだ。あとは、涼宮さんの判断に任せるよ」 佐々木は、伝票をもって、席をたった。 涼宮ハルヒは、紅茶のカップをにらみながら、ずっと考え込んでいた。 やがて、意を決したように顔を上げると、携帯電話を取り出した。アドレス帳の一番上にある電話番号を呼び出す。 「いつもの喫茶店に集合。今から30秒以内。遅れたら罰金」 一方的にまくし立てて、通話を切る。 彼が来るまでの時間。それは、彼女にとって永遠に等しいぐらいの長さに感じられた。 終わり
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涼宮ハルヒの憂鬱の小説です オリジナルキャラクターが出ますので嫌いな人は注意です 涼宮ハルヒの危機
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/1841.html
雨音がどこからか聞こえる。 気がつくとわたしは部室にいた。 「あれ?何でわたしここにいるの?」 「おれが呼んだんだ」 キョンの声がした。 「ハルヒ。」 「な、、、何よ」 「実はおれショートボブ萌えなんだ。おまえがショートボブにしないならおれは長門と付き合う。」 「何言ってるのよ!」 あのときわたしにポニーテールが好きって言ったの、あんたじゃないの! 「あいにくだけど、今のわたしは有希みたいなダサい髪型にするつもりはないわ。」 そのとき後ろに気配を感じた。振り返ると有希が立っていた。 「………情報の初期化を行う。あなたの髪の毛が二度と生えてこないように細胞分裂を停止させる」 「そうしてくれ。」 キョンがそんなこと言うわけ無い!でもキョンは続けて言った。 「じゃあな」 そんな。。。。キョン。。。。。 気がつくと私は部室で眠っていた。肩にはキョンのブレザー。 なんだ。夢か。。。。 それは雨の降る寒い日のことだった。 「没ね」 「そ、そんなぁ。。。。。。」 朝比奈さんは崩れ落ちた。
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/5262.html
第2周期 nOiSEleSsphAnTOmGIrL3 場面は転じて、夜の公園。しかも一人ベンチで寂しく……はないが座っている。 何故こんなところに居るかというと、此処で待つように指示するメモ書きが下駄箱にあったためである。 で、それを見た俺は素直にその指示に従って此処で待っているということだ。飯は食ってきたから長時間待っても大丈夫である。 まあ、この手段で呼び出しというのであれば、SOS団の緊急召集ではないことは皆さんもお分かりであろう。 「お久しぶりです」 朝比奈さん(大)がやってきた。 「今日は、ハルナについてですよね」 「はい、そうです」 取り敢えずベンチに座り、話を切り出した。 「今回のことで未来はどうなったんですか」 「不思議なことに、影響は少ないんです。確かに大きな変化が無かったとまでは言えませんが、私達が動く必要性はないとの見解です」 「そうなんだー」 「!!!!!!!!!」 !!!!!!!!! 何ということでしょう、そこにはニヤニヤしながらこちらを見ている団長の姿があるではありませんか。 勿論、慌てるとかいうレベルではない俺と朝比奈さん(大)。 「は、ハルヒ!?」 「あ……えっと……」 朝比奈さん、今更隠れようとしても無駄ですよ……。 「うーん、やっぱり大人になったみくるちゃんのもなかなか。これは揉みがいがありそうね…」 何だその品定めするような視線は。そしてその怪しい手の動きを止めなさい。というかさっきからどこを見ているんだ。 「決まってるでしょ、みくるちゃんのその立派な」 「あー、それ以上は言わなくていい」 駄目だ、あれは完全に獲物を見る目だ。 「例えおっきくなってもみくるちゃんはみくるちゃんよ!!」 「えっ、あ、ちょっと…! ぃゃ………………!!」 ハルヒが朝比奈さん(大)に飛びかかった瞬間には俺は即座に後ろを向いて見ていないので何があったのかは分からない(ということにしておいて貰いたい)。 背後から天使の悲鳴が聞こえるが俺にはどうにもできません、ごめんなさい……。 しばらくして悲鳴は止んだ。どうやらハルヒが満足したらしい。嗚呼無力な自分が悔しい。 「いやーやっぱり気持ち良いわねー」 「ぅぅ……涼宮さん…」 やはり泣いていらっしゃる。だがしかし俺にはどうすることも以下略 こうやってこそこそしていたわけだし、ハルヒに見つかってしまうのは相当まずいことなのではないのだろうか? 「はい、以前まではそうでした。涼宮さんに見つかることだけは避けなければならなかったんです。でも、涼宮さんによるリセット以降、これは規定事項になってたんです」 これ、とはつまり、ハルヒに見つかって…… 「い、言わないで下さい……」 「なに? つまりあたしから逃げられなくなったってこと?」 「簡単にいえばそうなります。その原因は分かっていませんが、リセットされたことで私達の未来とはほんの少しではありますが方向が変わったのかもしれません」 「少しねえ。その『少し』の影響量が気になるわね」 「それについては調査中ですので何とも言えません」 「調べ終わったらまた報告してくるの?」 朝比奈さんの言うことをしっかり聞いているのは、罪悪感などが残っているからなのだろうか。 「ここにおっきなみくるちゃんがいるってことはキョンに何か大事な話があるんでしょ?」 「え?」 再び二人は仰天である。何でそこまで知ってるんだ。恐るべし、全能の涼宮ハルヒ。 「お邪魔しましたー、ごゆっくりー」 ハルヒはそう言い残すと俺達に何も言わさぬままどこかへ行ってしまった。 ぽつーんと残された二人は呆気にとられていた。 あんなにあっさりしていたのは全くもって予想外であった。ハルヒがあれほど追い求めていた未来人に対面したのだから、もっと首を突っ込んでくると思ったのだが 「それにしても、なんかあの言い方はむかつくな」 「私があまり長時間この時間平面に留まれないことも知っているのかもしれません」 「あ、なるほど」 しかしまさかハルヒが配慮するなんてな。『事件』とやらが与えた影響はかなり大きいのかもしれん。 しばらくの沈黙ののち、本題へ戻った。 「リセットの影響はあるのにハルナの出現の影響はないというのはどういうことですか? ハルヒが二人になったも等しいというのに」 「そう思われたのですが、これが私たちの調査結果です」 「この先、何か重大なことが起こるんですか?」 「それはキョン君の結論次第です」 朝比奈さん(大)は真っすぐ俺を見てそう言った。 俺達がハルナを認めるか否か、それによって朝比奈さん(大)の時代で予測されているのとは異なる未来に向かうかもしれないのだ。 「では、そろそろ失礼します」 朝比奈さん(大)がベンチから立った。 「最後に一つ聞いてもいいですか」 「何ですか?」 「朝比奈さんはハルナのことはどう思いますか?」 「そうですね」 しばらく空を見上げていた。その後こちらを向いて微笑みながら言った。 「妹って、なんか羨ましいです」 翌日、ハルヒによる世界改変でハルナは元々いたことになっていたという報告を長門から聞いた。 「現在、涼宮ハルナは近所の小学校に通っている」 長門は廊下で俺が登校するのを待っていたのだ。朝会うなりそんな重要なことを聞かされるとはな。 「この改変に対し幾つかの派閥が苦言を呈している」 長門は付け足すようにそう言った。そんなこと無視してしまえばいいと思ってしまうだろうが、相手が相手だけに注意しなければならない。 「だが暫定的であってもそうでもしなけりゃハルナの居場所がないぞ」 「そう主張したが受け入れられなかった」 「そうか……、済まんが引き続き説得を頼む」 「わかった」 僅かに頷いた長門はカバンを持って教室へと入って行った。 その姿を見ていてしばらくその場に突っ立っていた俺であったがが、「廊下のど真中で何してんだこいつ」という周囲の視線を喰らったため教室へ入ることにした。 教室には既にハルヒがいた。頬杖をしてぼんやりと外を眺めている、やはり考え事をしているようだ。 俺が来たことに気付き、こちらを向いた。 「おはよ」 「おう」 綿菓子のように軽い挨拶だけすると、また視線を外に戻していた。 「……」 「……」 着席して以降お互いに話しかけようとせず、会話が成立することはなかった。 その後は雑談もしたが、さすがにハルナのことについて教室で話すのはまずいと考えたのでそれを話題にすることはなかった(ハルヒも同じ考えだったようだ)。 放課後、真っ先に部室へ向かうとすでにみんな揃っていた。団長様は腕を組んで仁王立ちしていた。 「遅い!」 「そんなに遅くないと思うんだが」 「もうみんな揃ってんのよ、あたし達を待たせたのがアンタが遅れた証拠」 「そうかい、そりゃあ失礼」 「まあいいわ、全員揃ったことだし、早速会議を始めましょう」 というわけで各々が着席する。議題は言うまでもなくハルナについてである。 「そういえば、ハルナちゃんは小学校に通ってるんですよね」 朝比奈さんも知っているのか、長門はみんなに報告して回っていたのだろうか。 「そうよ」 「何歳なんですか?」 その質問に及んだ瞬間、ハルヒがわざとらしくため息をついた。 「それを考えてなかったのよ。突然生み出されたんだから自分でも年齢なんて分からないのよ。二人で随分考えたけど、アンタの妹ちゃんより二つ下ということにしたの」 つまり4年生か。 「あの骨格からすればそのあたりが妥当」 長門がそう言うのだから、ハルヒの勘は正解だったということか。 だとしても、あいつの頭脳からしたらまさしく某小学生名探偵のような状態だな。 「仕方ないじゃない。あの姿で高校に来てもいいけど飛び級なんて……そうよ! 飛び級ってことにすればいいのよ!」 ぶっ飛んでいらっしゃる。この国に飛び級の制度はなかったと思うんだが。 「ちょっとまて、いいのかそれ」 「あたしがいいって言ったらいいのよ!」 自分中心に回るハルヒ節が復活していた。それもそれで悪くはないんだがな。 「だがハルナはそれに賛成するのか?」 「それはハルナに聞いてみないと分からないわ。あくまでもハルナの意見を最優先にするつもりだけど」 「古泉君、そっちには何か動きはあった?」 「機関からは正式な結論は出されていませんが、賛成意見が多数を占めているので心配はいらないと思います」 「そうか、まず一つは良しだな」 朝比奈さん(大)が言っていたことを賛成意見と捉えてもいいならば、早くも統合思念体以外はOKということになる。順調と言えば順調だが、ここからが正念場である。 「有希の方はどう?」 「こちらとしては結論が出ない限りは無暗に行動できない」 「まだ結論は出てないの?」 「審議中。なかなか折り合いがつかない」 「大変みたいね、ちゃんと休んでる?」 「大丈夫」 「そう、ならいいけど。無理はしちゃダメだからね」 そのいたわる気持ちを小さじでもいいから俺に対しても持ってほしい。 「じゃあ今日はこれで解散ね」 いきなりの終了宣言であった。 「やけに早いな」 「あたしにだって色々あるのよ、じゃあね」 自分のカバンを持ってさっさと出て行ってしまった。 昨夜同様、取り残された形となって呆気にとられていたが、気を取り直して気になっていたことを尋ねた。 「なあ古泉」 「なんでしょうか」 「閉鎖空間はどうなってる」 「やはり悩んでいるようです。小規模ながら高い頻度で発生しています」 長門に言っておきながら、お前が無理してどうすんだよハルヒ。 ハルヒが帰ってから十分と経たないうちに、自然と解散になった。 だが俺はまだ帰らず、一人で廊下を歩いていた。 実に不覚である。教室に課題プリントを忘れるとは。 教室に入る時に、どっかの誰かみたいに『忘れ物の歌』なんか歌わないぞ、と思ったものの結局脳裏にあのリズムが浮かんだまま席に向かっていた。 「あったあった」 目的のプリントを見つけ、それを四つ折りにしてカバンの奥にねじ込んだ瞬間であった。 一瞬にして明かりが消えて真っ暗になった。 「おいおい……」 蛍光灯がすべて同時に寿命を迎えるなんて奇跡的なことがあるのだろうか。経験者はぜひともSOS団に連絡してほしい。 驚いたのは勿論のことだが、すぐさま身構えた。この真っ暗な教室は見覚えがある。窓も扉も、無機質なコンクリートのようになっていたからな。 暗がりの中、机に座って待っていたのは予想通りの人物であった。 「朝倉、またお前か」 「そう。悪い?」 十分悪い。 「今回はハルナの件についてだろ? あいつの能力が未知だからって、俺を殺して涼宮ハルナの出方を見るとか言うなよ?」 「残念ながら貴方の予想はハズレね」 「どのみち俺には生命の危機がやって来るんだろ?」 「あら、でもこれからの動向によってはキョン君の運命も変わるかもね」 わざわざウインク付きの笑顔をありがとう。あまり嬉しくないね。 「キョン君の予想通り、今回は涼宮ハルナちゃんについてなんだけど」 ちゃん付けなんだな。まぁハルナは見た目は幼いからな。 「こんな場所に閉じ込めたんだから、お前の派閥が賛成じゃないってことは確定なんだろうな」 朝倉はあの時のように俺の正面に立つと下を向いた。 「ごめんなさい。急進派としてはあの要求は不都合みたい」 「一体どこが不都合なんだ。ハルナの存在か? 不干渉という条件か?」 「残念だけど両方。私達の正体を知ってしまった以上、こちらにも涼宮さんの影響が現れかねないという見解なの」 で、俺を人質にしてハルナの要求の撤回を迫っているって訳か。 「警告はしたはずです」 その声に仰天した。 「え……おい……」 まるで最初からいたように、俺の隣にハルナがいた。いつ来たんだろうか。 「まあ、これは想定の内なんだけどね」 余裕の表情を見せる朝倉をハルナが睨みつけている。 初対面のはずなのにお互いをよく知っているようだ。 「警告を無視すると、言った通りになりますよ」 「貴方の脅し文句は統合思念体の無力化、だったかしら? 残念だけど、貴方にそれは出来ないわ」 そう言うと背中を向けて教室内を歩き回る。 「貴方には涼宮さん……貴方のお姉さんみたいに意志を貫くことが出来ない。貴方には強い責任感があるから」 朝倉が立ち止まると、誰かの机の中から忘れ物らしき教科書を手に取った。 「強い願望を抱いても、現実が伴い『でも』等と考えてしまう。だから願望が完全に実現することはないわ」 それは瞬く間に槍へと形を変えた。 「たとえそうだとしても、彼を殺させはしません」 ハルナが更に語気を強くしているが、朝倉は相変わらず挑発的な笑みを浮かべて俺とハルナを交互に見ている。 「更に残念だけど、キョン君は只の撒き餌なの。本当の目的は貴方ってこと」 だろうな、俺を殺すなら以前にでも来たはずだろうし。 「私に与えられた仕事は貴方を殺すことだもん、ハルナちゃん」 壁が一瞬光った。嗚呼やっぱり強烈なデジャヴを感じる……。 それを見たハルナは明らかに動揺していた。 「空間が上書きされて封鎖が強力になっています。私一人では突破出来ません」 「そうよ、逃げられないの。だから、抵抗しないで殺されて」 それだけは避けなければならない。ハルナがどれ程の力を持っているかは知らんが、朝倉に対抗できるかどうかは更に分からない。もしかしたら敵わないか可能性だってある。 急進派の好き勝手を許してなるものか。 俺は傍にあった椅子を掴んで投げ飛ばした。勿論、効果はないのは承知済みである。しかしささやかな妨害くらいにはなるだろう。 「ん? キョン君は私達とは逆の意見のようね」 「そうみたいだな」 そう言った瞬間、強烈な痛みを感じた。 朝倉が持っていたはずの槍が左肩に刺さっていた。投げたモーションが見えなかったぞおい。 傷口から止めどなく熱い液体が流れている。 「てめぇ……」 「あら? その目はまだやる気ってことかな? 勇敢ね」 またしても気付いた時には朝倉が目の前に移動していた。そして俺を壁に押し付け、肩に刺さっていた鎗を握った。 「うるさくしてもいいんだけど、邪魔しないでね?」 「うあああああああああああああああああ!」 鎗がねじ込まれ、肩に猛烈な痛みが走る。右手で必死にそれを止めようとするが力は相手に比べりゃ圧倒的に少ない。 「やめろおおおおおおおおおおおお…………!!」 叫んでも全くもって無駄である。容赦なく肉を裂き骨を割り、鋭利な金属が奥まで侵攻してくる。 遂には貫通して壁に深く刺さっていた。俺は磔にされたも同然だった。 「利き腕にしなかっただけましだと思ってね」 俺が身動きできなくなったのを見届けると、ハルナのほうを振りかえった。 ハルナはじっと動かずにこちらを見ていた。 「お待たせハルナちゃん、そろそろいくね」 朝倉がナイフを手にハルナに近づく。 「くそっ、やめろ……」 少しでも動けば傷に刃が食い込み激痛に襲われる。 「逃げないの? いい子ね」 朝倉がハルナを切りつける。ハルナは慌てる様子もなくナイフの刃を掴んでいた。 しばらくの無音の後、ハルナの手から血が滴り落ちた。 「どうしたら、許してくれますか?」 その問いかけに朝倉はまた笑っていた。 「それ無理。許すも何も、私は貴方を殺さなきゃいけないもの」 「私を殺したら、姉さんの分も許してくれますか?」 「さあ。私には決定権はないの」 その時、普通に扉が開いた。ハルナいわく頑丈に封鎖されていたにも関わらずである。 やって来たのはハルヒと長門だった。 「あら客さん?」 「また随分と行動が早いのね、早速攻撃をしてくるなんて」 磔にされた俺を見た長門が高速呪文詠唱をすると、左肩を貫通していた鎗が消えて傷も痛みも全く無くなっていた。 鎗は教科書に戻って床に落ちていた、って谷口の数学の教科書じゃねえかこれ。 「あんまり面倒を起こしたくなかったんだけどね」 そういうとハルナの前に立ち、朝倉と対峙した。 だがこれにも朝倉は動揺することはなかった。それどころかクスクスと笑ってやがる。 「もう、みんな邪魔が好きなのね」 朝倉がジャンプしたかと思うと、ハルヒが吹き飛ばされて壁に衝突した。とんでもない速さの跳び蹴りだった。 「ハルヒ……!?」 急いで駆け寄ったが、頭を強打したらしく気を失っていた。 ちょっとまて、朝倉強すぎないか? 長門に心の声が届いたのだろうか、その答えを出してくれた。 「反対派が朝倉涼子に協力している可能性がある」 「だとしたら対抗できないんじゃないか……?」 「こちらも協力を要請している。それまで私が時間を稼ぐ。貴方は涼宮ハルヒを」 そう言って朝倉に攻撃を仕掛けようとした長門であったが、朝倉の方を向いた瞬間に動かなくなった。 「…………」 「何……」 長門がそう呟いた。何かあったのか? そう言おうとした瞬間だった。 全身の毛が逆立つのを感じた。 人の目を見てあれほど怖いと思ったことはなかったな。 悲しみか怒りか、ただ黒いだけではない黒い影がハルナを中心としてブラックホールのように全てを喰らい尽くそうとしていた。 それを間近で見た朝倉は硬直している。ただ動かないだけなのか、動けないのだろうか。 )H??繼bモM、・.09wSS瞑Iコen 蹣、、h.1ae,顳コ・f%HdL、 udjmx劉_??KU、夊? ・F?Vz? 何と言っていたのかはノイズ混じりだったのでさっぱり聞き取れなかった。 ノイズはさらに増幅して防犯ブザーに負けず劣らずの大音量となって耳を襲い、俺の聴力を狂わせていた。 「ハ、ハルナ……?」 そう呼び掛けたであろう自分の声も骨伝導でわずかに聞こえただけであった。 耳を押さえても無駄であった。そのノイズは耳を介さず直接脳に響いているようであった。 気付いた時には、教室は荒野に変貌していた。 机と椅子はそのままにして、現実離れしたほどに荒れ果てた大地である。 ここはどこだ? 見上げると、異常な早さで雲のようなものが流されている。 とうとうノイズは聴力だけに飽き足らず、視力さえ侵食し始めていた。 目の奥が焼けるように痛い。視界がぼやけ、時折テレビのチャンネルを合わせていない時に映るあのノイズが見える。 「……何……………これ…………」 朝倉に何が見えているのだろうか。 「…………めて……………来……で……!!」 視力を奪われつつある俺の目には、金切り声を上げながらナイフを振り回す朝倉の影がかろうじて映っていた。 何に襲われているのだろうか、俺には朝倉が怯えるほどのものは確認できていない。 視力がほとんどないので無暗に動けない。 俺はただ朝倉が発狂する様を見ているしかなかった。 「何が起こっているのか全く分からない」 長門の声が聞こえた。この異様な光景を前にした宇宙人は一体どんな表情をしているのだろう。 「いったぁ……生身の人間相手にあんな強くやるなんて……」 ハルヒが意識を回復した。 「大丈夫か?」 「なんとかね」 だが周囲の様子を見るや否や、ハルヒの表情は一変した。 「派手にやってくれたわね……全く」 怪我は大したことなかったようにすっと立ち上がると、何やら念ずるように目を閉じた。 「……は?」 またしても一瞬の出来事であった。次の瞬間には、荒野が再び元の教室へ姿を変えていた。 もう何が何だか。 だが完全に元の世界に戻ったわけではなかった。灰色に染まった見覚えのある空間だ。 「閉鎖空間……って言うんだっけ? それに上書きしたのよ」 淡々と語っていつその目は、真っすぐハルナを向いていた。 「それしか戻し方を知らないから」 その視線に刺されたハルナは、悪戯が見つかってしまった子供のような表情で固まっていた。 ハルヒは硬直しているハルナに歩み寄ると、思いきり頬を叩いた。 それはもう凄い音が教室に響いていたから、本気で叩いたのではないだろうか。 「ハルナ、それは使わないって約束だったよね?」 「……」 怒りに満ちたその声を聞いた俺と長門は、こちらに向けられたものではないのに委縮してしまいそうだった。 「二度目は無いからね!! 分かった!?」 「……ごめんなさい」 これほどまでに厳しく叱りつけるのは、その力がどれだけ恐ろしいかを知っているからなのだろう。 そのころ朝倉はというと、一体何を見たのだろうか、震えたまま教室の隅で子供のように丸くなっている。 「これはやり過ぎね……」 そう言ってハルヒが近付くと、朝倉が弱々しい悲鳴を上げる。 「や…………め………て………」 もはや言葉は一文字ずつしか発することが出来ないらしい。 ハルヒはしゃがむと怯える朝倉の頭に手を置いた。 すると朝倉の呼吸が少しずつ落ち着き、恐怖一色だった表情が段々穏やかになっていく。 「……」 落ち着いたとはいえ、言葉が出ないらしい。 「貴方達は……何なの?」 ようやく出た言葉は、高い能力を誇る宇宙人らしからぬものであった。 「あたしは涼宮ハルヒ、でこっちが妹のハルナ」 「そうじゃなくて……」 「あたし達にとってはそれ以上もそれ以下もないわ」 「……でも貴方達は我々にとっては脅威なのよ。だからこんな命令が下っ」 「そう思ってるだけよ、あたしはアンタ達を敵視してるつもりはないわ」 ハルヒがこちらに振り返った瞬間、朝倉が床に横たわってそのまま動かなくなった。 「言っとくけど眠らせただけよ」 ナイフのように鋭利な眼光であった。こいつ、最近で一番と言っていいほどに苛立っているな。能力のことに関して神経質になっているのだろうか。 その表情を緩めると長門と対面した。 「有希、このことは上には報告しないってことは出来る?」 「それは不可能。既に送信されている」 「そう……じゃあせめてさっきの記憶だけでも消してあげてくれる?」 「分かった」 長門が朝倉の記憶を修正している間にハルヒは教室を出ていってしまった。 ハルヒが帰ってから数分後、閉鎖空間は消滅し、窓からは夕闇が差し込んでいた。 ハルナはすっかり落ち込んでいた。夕日よりも真っ赤に腫れた頬を涙がつたっていく。 教室を荒野に変えてしまったあの時からずっと動かずに立っている。俺はその小さな背中の後ろに行くと、ハルナが呟いた。 「……ごめんなさい」 「失敗から学ぶっていうだろ? 学習学習」 頭を軽くぽんぽんと叩いた。 「同じ過ちを繰り返さなけりゃいいんだよ」 ハルナは少しだけ頷いた。 そう言ったものの、その力がたった一回の過ちで世界を滅ぼしたのではなかったか。 俺が言っていることは矛盾していた? 「繰り返さなきゃ……な」 二回目のそれは、どちらかといえば自分に言い聞かせているように思えた。 朝倉の記憶修正を終えたらしく、長門が立ち上がった。 「終わった」 「御苦労さま」 「いい。朝倉涼子のことは私に任せて、貴方は涼宮ハルナを」 「長門、あの時言ってたことに間違いはないんだな」 「何」 長門がこちらを振り向いた。その奥で朝倉はいまだに眠っていた。 「あの時言った『無理はしていない』ってのは嘘じゃないだろうな」 「嘘ではない。無理をするのは反対派との全面衝突になった時」 答えるまでに少しの無音があったので、図星なのかと思ってしまった。 まさか長門がジョークを言うとは思わなかった。あまり笑えないのだが。 「分かった、それなら安心だ。それと、もう一つ頼みがあるがいいか?」 「何」 「ハルナのケガを治してやってくれ」 「分かった」 長門がハルナに近づき、その手を取った。 ナイフの刃を握っていた小さな手からは、未だに血が流れていた。高速呪文を呟くと、傷は跡形も無く消えた。 「……」 ハルナは傷の消えた手の平をずっと見ていた。 「ほら、お礼」 「え、あ、ありがとうございます」 俺が促すとはっとしたようにそれだけ言って、また視線を手の平に戻して黙り込んだ。 「いい。……また明日」 「おう、またな。行くぞ、ハルナ」 やっぱりこの名前を呼ぶのにはまだ違和感がある。早いとこ慣れないと。 「……」 「いつまでもここで落ち込んで立って仕方ない、帰るぞ」 今度は頷くことはなかった。だが、俺が廊下に出でもう一度呼ぶとついて来た。 廊下を歩く俺の隣の小さい影は下を向いていた。何と言ってやればいいのか分からず、帰って墓穴を掘りかねないので黙っているほかなかった。 無言でいる間、さっきのことを思い出していた。 砂漠のように荒れた大地、激しいノイズ、何かの叫び声のような音、現れたものは散々ハルヒのことに巻き込まれてきた俺でさえ全て未体験のものばかりで、それらはハルヒの閉鎖空間とは似ても似つかぬ光景を生み出していた。 何より気になったのが、ノイズに視力や聴力を奪われていてもしっかりと感じたあのどんよりとした重たい空気である。 あの空間はあの『事件』とやらの記憶が影響しているのだろうか。ハルヒが詳細を言わないので推測にすぎないが、好んであんなものを創造するとは到底思えないからな。 ハルナは事件の記憶を引きずっているのだろう。その時にハルナが関与していたのかもしれない。 昇降口に差し掛かった時に俺は立ち止まり、こう切り出した。 「さて、そろそろ仲直りタイムにしようか」 「あ……」 ハルナもすぐに気付いたようだった。 「どうして分かったの」 そこにハルヒが待っていた。 「勘、だな」 「なによそれ、カッコつけてるの?」 「これでもいたって真面目の回答なんだがな」 「ふぅん」 夕日に照らされながら坂を下る三人。結局ハルヒと合流しても無言に変わりはなく、気まずい雰囲気が持続していた。 「……さっきはごめんね。思いきり叩いたりなんかして」 で、ハルヒが口を開いたかと思えば……。 「……」 「あたしが無茶苦茶してた時は、ハルナは何にも咎めず許してくれたのに、あたしは散々怒鳴り散らしちゃって……」 ハルナはそれを黙って聞いていた。 「ハルナを苦しめ続けてきたのよ、あの時からずっと」 俺もなかなか割り込むチャンスを得られなかった。 「あたしばっかりが勝手に怒って、勝手に泣いて。ハルナのことを思ってのはずなのにそれは二の次三の次にしちゃって」 「ちょっと止まれ」 急な命令に驚いたのか、二人はすぐに立ち止まった。 「どうしたのよ急n……」 こっちを向いた瞬間に、二人同時にでこピンをお見舞いした。 「いっ」 「ぅぅ……」 「何すんのよ!」 「本当にそっくりだよな、自分にばっかり責任を感じちまうところも」 その指摘を受けた二人は、額を押さえながらお互いを見ていた。 「何と言ったらいいかよくわからんが、あんまり深く考えない方がいいんじゃないか? この世界は崩壊してないんだし……な」 返事がない。そりゃあ俺のどうにも言葉足らずなものではどうにもならないか。 「なんかごめんね。じゃ、あたし達はこっちだから、またね」 「おう」 何か気の利いたことが言えないのか俺。 だんだんと小さくなっていく二人の背中を見ながら、おれは自分の手の平を見ていた。 どうも違和感があったんが敢えて何も言わなかった。 「現実までこうなんのか……」 俺の手の平には赤いべとべとがついていて、鉄の臭いがした。いつついたんだよこれ。 第3周期へ
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涼宮ハルヒの憂鬱 色 出演者 備考 黄色 涼宮ハルヒ(声:平野綾) 水色 キョン(声:杉田智和) 緑色 -
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涼宮ハルヒの憂鬱 涼宮ハルヒの憂鬱のアニメの動画です。
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涼宮ハルヒのSS 厳選名作集 長編 涼宮ハルヒの軌跡 ◇◇◇◇ 土曜日、明日になれば自動車事故から一週間になろうとしている。 幸いなことに月曜日以降、誰も死ぬどころか危険な目にあっていなかった。 今日、俺はハルヒと一緒に、先週の事故発生現場を廻っていた。歩くと時間がかかるので、タクシーを使って移動している。 いろいろ確認したいこともあるらしい。 まず看板に潰された男子生徒の現場に立っていた。 倒れてきた速度規制の看板はすでに新しい頑丈なものに直されていた。商店の上にあった看板は撤去されたままである。 あの事件を思い出す要因を残しておきたくないかもしれない。 「すっかり現場が変わっちゃっててこれじゃ調べようがないわね」 何も見つからずにその場を去り、続いて野球ボールのせいで死んだ女子部員の現場、火事が原因で死んだ女子部員と顧問の現場と 廻っていったが、やはり何も見つからなかった。まあ、目で見つけられる問題があるならとっくに警察が回収しているだろうが、 ハルヒもただじっとしている気にはならないのだろう。何か手がかりがないかともがいているに違いない。 俺たちは黙ったまま、当てもなくタクシーを走らせていた。 深刻そうな顔のままのハルヒに対して、実のところ俺は少々楽観的になりつあったりする。 この一週間何も起きていないからな。本当にただの考えすぎで、【偶然】の事故だったのかもしれない。 死が追っかけてきているなら、三人立て続けに始末してからそれ以降何もしないってのは、おかしな話だからな。 と、ここで急にタクシーが止まる。何でも急に催してしまったらしい。そこで一旦近くの公園のトイレに寄りたいとのこと。 まあ、朝から乗りっぱなしだからな。メーターの金額は目を飛び出す状態だ。ハルヒがどっからちょろまかしたのか知らないが 沢山のタクシーチケットを持っていなければ、俺は即刻破産するところだ。 タクシーは程なくして二車線道路に隣接している公園脇に一時駐車して、運転手がエンジンを止め鍵を掛けて出ていった。 と、タイミングを狙ったかのように俺たちの目の前にゴミ回収車が止まって、作業員たちが 公園脇にあったゴミ集積場のゴミを回収車に投げ入れ始める。 邪魔者がいなくなったということで、俺はハルヒとの会話を始める。 「なあ、俺たちの考え過ぎだったんじゃないか? 実際この一週間何も起きていないんだ」 「……だといいんだけどね」 ハルヒは表情を固めたまま崩そうとしない。何を心配しているのだろうか。まあこいつの勘は恐ろしいレベルだからな。 きっとまだ何か嫌な予感が続いているのだろう。 俺はふと先にトイレを誰かが占拠していたらしく必死に我慢しながら順番を待っているタクシーの運転手を横目に、 「そんなに心配ならお前の力で何か調べられないのか? 情報統合思念体の目もあるだろうから難しいだろうが、 何もできないって事はないだろ。少なくてもこの時間平面を支配しているのはお前なんだから」 「あのね、キョン。言っておくけど、あたしはやり方はわかるけどその膨大な情報量を処理する能力まで持っていないの。 時間平面に存在している情報量がどれだけのものか考えたことある?」 ここでハルヒは懐からメモ帳を取り出し、空白の一ページをこっちに見せつけると、 「これがある時間平面をさしているとして、このページに存在している全てを調べるとなると、構成している原子を 一個一個見ていくような作業になるのよ? しかもページも無限にあるときているんだから。 最初にあったときに言ったけど、別の時間平面とは言えあんたの存在を見つけたのは偶然中の偶然。奇跡って言って良いわ。 同じようなことをしろって言っても無理よ」 「だが、時間と場所はある程度絞れるんだろ?」 「無理。この手帳のどこがどの時間・場所か調べるのには結構時間がかかる。それに長時間調べると 奴らの目に確実に引っかかるわ。時間平面の狭間みたいに奴らの監視の届かない隔絶された場所ならまだ可能だけどね」 ――ふと、ゴミ回収の作業員が何事か怒鳴っているのに気が付く。見れば、回収車の前面に自転車をぶつけられたらしい。 しかもぶつけたって言うのが柄の悪そうな高校生の集団で、気の荒そうな作業者と一触即発寸前でにらみ合っている。 一方のトイレに並んでいたタクシーの運転手はようやく順番が回ってきたのかすでに姿は見えない。 「ってことは結局後手に回るしかないのかよ。予知能力と同じようにあらかじめ予兆とかそんなものを 感じ取れれば良いんだけどな……」 俺の言葉にハルヒはそれができれば苦労してないと肩をすくめて首を振った。 ――背後から一台の大きなトラックが迫ってきていることに気が付く。 「ちょっと待った」 ハルヒが俺の話にタンマをかけると携帯電話を取り出して通話を始めた。書道部部長(女子)からよ、と言って お互いの無事を確認するような話を始めた。ハルヒは全員の無事を確認できるように定期的に関係者との 連絡を絶やしていなかった。これも予防措置の一環なんだろう。 やがて短い会話を終えると、携帯を閉じ、 「ちょうどすぐ近くを親と一緒に車で走っているらしいわ。とりあえずは無事みたい」 ハルヒがそうほっと胸をなで下ろした瞬間だった―― 突然背後で大きな衝突音が炸裂する。何事かと振り返ってみると、さっき背後から迫っていたトラックが一台の軽乗用車を はねとばし俺たちのタクシーに向かって突進してきていた。運転手は何をやっているんだと思いきや、 うつらうつらと居眠りを扱いてやがる。 「おいおいおい! このままだと俺たち追突されるぞ!」 「早く出ないと――あ、あれ!?」 俺たちはタクシーのドアを開けて外に出ようとするが、どういうわけだか鍵もかかっていないのに扉が開かない。 どうなってやがんだ。なんで開かない!? この瞬間直感的に俺は悟った。背後から迫るトラック、前には作業者不在のまま動作を続ける回収車…… この感じ、あの無駄に続く不幸な【偶然】だ。今俺たちは…… 「ハルヒ! 俺たち狙われているぞ!」 「言われなくてもわかっているわよ――きゃあ!」 その言葉を言い終える前に、トラックがタクシーの後部に追突した。その衝撃でタクシーが強制的に 前進させられ前の回収車にぶつかる。その衝撃でフロントガラスが崩れ落ち、俺たちの眼前に回収車の後部の ゴミ投入口が眼前に迫った。 しかし、事態はこれでは終わらない。背後のトラック運転手はまだ意識を失っているのか一向にブレーキを踏む気配が無く 延々と押し続けてくる。それがうまい具合にタクシーの車体を後ろから持ち上げて来る。次第にタクシーは 逆立ちするような状態になっていった。 つまりこのままだと滑り台の要領でタクシー前面に落下することになり、その先にはゴミを押しつぶしている機械に 二人とも巻き込まれるって事だ。 事故が起こっているんだから、作業員はとっとと戻って回収を止めさせろと怒鳴りたくなるが、あっちは 結局乱闘騒ぎになったらしく、多勢に無勢だったせいか作業員が地面に倒れていた。 一方の柄の悪い高校生たちはこの事故を見て、俺たちを助けるどころか一目散に逃げ出していく。根性なしめ! ゴミ回収車は完全に主を失い、ゴミを求めて空回りを続けている状態だ。で、そこに次なるゴミとして投げ込まれそうに なっているのが俺とハルヒである。 ハルヒは何とかタクシーの座席にしがみついて、前面に落ちないようにしている。俺もそれのマネをしていたが―― 「うわっ!?」 「――ハルヒ!」 普段あり得ない力がかかったのか、それともこれも【偶然】故障していたのか、突然ハルヒのしがみついていた 運転席が前のめりに倒れ危うくそれに沿って、ゴミ回収車の方に滑り落ちそうになる。 間一髪で俺がその腕をつかんで落ちるのを阻止するが、背後のトラックは一向に止まる気配が無く、 どんどんタクシーの車体を逆立ち状態に追いやっていった。角度が急になり、ほとんど垂直に近い状態に近づく。 地面にはゴミ回収車の投入口が待ち受けているのは変わらない。このままではハルヒが巻き込まれる。 俺は限界の限界まで力を引き出しハルヒの腕を引き上げようとした。だが、今度は俺のつかんでいた助手席が 前のめりに倒れる。 不意打ちを食らった俺はなすすべもなくハルヒともどもゴミ投入口に落下して―― 俺の頭の中に今までの人生が走馬燈のごとく蘇った。ああこれが死ぬ間際に見るっていう 記憶のフラッシュバックなんだろうな。 しかし、脳裏に蘇ってきたのはあの自動車衝突事故のシーンばかりだった。ガスボンベに体当たりされる顧問、 追突してきた乗用車に轢かれる鶴屋さん、火炎に巻き込まれる女子部員と部長、爆風で飛んできた 割れたガラスの破片に串刺しにされる谷口・国木田……そして、俺の真上から迫るトレーラーの一部が 結局俺には当たらず俺の数センチ横に落下する光景――あれ? 何かおかしいぞ? 走馬燈が停止したのは、回収口に落下した時だった。生臭い香りで胃液が逆流しそうになる。 しかし、回収口のゴミを押しつぶす動作は停止していた。俺が恐怖のあまり震える顔を横に向けると、 そこにはふらふら状態になりながら、停止ボタンを押している作業者の姿が。見上げるとようやく起きたのか、 唖然とするトラックの運転手の姿も見えた。隣では背中を打ったショックかハルヒが悶えている。 ――助かった。本当に寸前のところで俺たちは死から回避できたんだ…… 俺とハルヒは興奮状態を押さえつつ身体に付いた生ゴミの破片を払っていた。事故を起こした運転手が 涙ながらに警察に連絡しているのが聞こえてくる。 ハルヒは眉をひそめて、 「これでわかったでしょ! まだ終わっていないのよ! 今のは運が良かっただけ! また狙われるわ!」 そう怒鳴ってきた。しかし、俺は額に手を当てて、あの死を覚悟した瞬間のフラッシュバックを 再度思い出していた。 次々と死んでいく人たちの光景――思い出すべきは最後の瞬間だ。俺は落下してきたトレーラーの破片に 潰されたと思っていた。だがそれは違う。 今のショックのせいか、記憶が鮮明に蘇ってきた。 俺が戻れと念じる間、俺の身体の数センチ横に落下するトレーラーの破片、そして横でやけどぐらいは負っている かもしれないが、生きているハルヒの姿…… 「違う」 「何よ?」 「違うんだ!」 俺は無我夢中でハルヒの身体をつかみ、 「今のショックで全部完全に思い出したんだよ! 俺とお前はあの事故で死んでいない! 少なくても俺はそこまでは 見ていなかったんだ! だから俺たちは狙われていないはずだ!」 「じゃあ今のは何よ! どうみても偶然があたしたちを襲ってきたわよ!」 ハルヒの反論に俺はうっとうなる。あの事故で俺たちが死んでいないのなら、今の粘着的【偶然】は起きないはずだ。 いやまて。 ちょっと待てよ? 「あのトラック、タクシーに突っ込む前に軽自動車をはねなかったか……?」 「それが何か――」 俺の言いたいことに気が付き、ハルヒの顔色がみるみる変わっていった。そして、すぐに走り出す。 トラックにはねとばされた軽自動車はスピンして、最後には電柱に衝突していた。エンジンの部分から煙を 立ち上らせている。 運転手はエアバッグが作動して無事らしい。衝撃で意識が朦朧としているのか、額に手を当てて呻いていた。 俺たちはエアバッグで見えない助手席の方に回り込む。 「そ……んな……」 その光景を見てハルヒが地面にへたりと座り込んだ。 助手席には書道部部長(女子)がいたからだ。どういう訳だかシートベルトが外れ、エアバッグも作動せず フロントガラスに顔を突っ込んでいる。ぴくりとも動かないところを見ると、もう助かる見込みはない。 今の偶然は本当にただの偶然で、本当の狙いは書道部部長(女子)だったんだ。いや、あるいは俺たちに 彼女の救助をさせないために一時的な窮地に追い込んだのか? 考えればきりがない。 俺はハルヒの手を引き、離れた場所に移動させる。 ここでハルヒは我を取り戻し、 「さっき言ったことを説明して! あたしたちは死なない。少なくてもあんたはそこまでは見ていない。 それで良いのよね?」 「ああ、完全に思い出したぞ。すまねぇ、今の今まで記憶の片隅にもなかったんだ」 「そんなことより! 他には? 他に何か思い出せない? もっと違和感がある部分とか不自然なところとか。 あと実は巻き込まれていなかった人が他にいたとか!」 ハルヒの追求に、俺は額に指を当てて記憶を探り始める。 一つ、気が付いた。 「朝比奈さんがいない」 「みくるちゃんが?」 俺は頷き、 「そうだ。記憶を探っても朝比奈さんが事故現場のどこにもいないんだ。いや、単純に俺の視界に 入っていなかっただけかもしれないが……」 その言葉に、ハルヒはきっと表情を引き締めた。 俺はすぐに止めるようにハルヒの前に立ちふさがり、 「待て待て! 朝比奈さんが犯人と限った訳じゃない。確かに未来人で可能性はゼロじゃないが、 事故に巻き込まれたことに俺が気が付かなかっただけかもしれないんだ!」 「……それはわかるけど、他に怪しい人がいるって言うわけ!?」 「だからといって決めつけられねぇよ! 朝比奈さんがそんなことを平然とできるわけがないってのは 短い間とはいえ触れあったお前にだってわかるはずだ――」 言ったとたんに重要なことを思い出すのはなぜだろうか。英語で言うところで、シット!とかサノバビッチ!とか 叫びたくなる瞬間である。 朝比奈さん(大)からの指令書を朝比奈さん(小)が見たときに、こう言っていた。 特殊なコードを一度見ると、指示通りに動くしかなくなると。 つまり朝比奈さんは自分の意思でなくても、こういった残虐な行為をやってのけることができる。 未来からの指示に従うしかないのだ。 「……全く今更な情報をこんな時に出してこないでよ! 出し惜しみしてんじゃないでしょうね!」 「スマンとしか言いようがない! だが、それでもできるからと言ってやったことにはならないぞ。 証拠が欲しいんだ。それに例え朝比奈さんが犯人だとしても証拠がわかれば次の手に先回りできるかもしれない」 俺の言葉に、ハルヒは決意を込めた声で応えた。 「……時間平面の検索をしてみるわ」 俺たちはさっきの事故現場の処理に追われるのを横目に、隣接した公園で時間平面の検索とやらをやっていた。 とは言ってもやっているのはハルヒだけで、俺は念のために谷口・国木田・朝比奈さん・鶴屋さんに連絡を取ろうと している。しかし、こんな時に限って誰ともつながらない。コールしても反応なしか、コールすらしないか どちらかである。 「ああもうダメだわ! 探す先が多すぎてとてもじゃないけど無理!」 ハルヒはいらだって髪の毛をかきむしった。俺も誰とも連絡の取れない状況に苛立ちをぶつけるように 携帯を閉じる。 「時間平面って言っても、それこそ天文学的数値をそれでかけたよりも多い情報量なのよ。 ピンポイントに特定の情報を探しだせって言われても無理だわ!」 誰に言っているのかわからないように怒鳴るハルヒ。こいつの力でも無理なのか。 どうすりゃいいんだ……どうすりゃ…… ふと、ハルヒが持っていた手帳を時間平面に例えているシーンが脳裏に過ぎる。 このページのどこにどの情報があるのかすぐにはわからない。それは一つ一つ調べて行く場合膨大な時間が 費やされるからだ。情報統合思念体の目の届くうちでは不可能。 俺は思案しながら周囲をうろつく。かりに朝比奈さんが犯人だったとしよう。そうなると手段は TPDDという時間を超える装置のようなものを使って行っているはずになる。 そうならば、時間平面は朝比奈さんによって改竄されているはずだ。探せばいいのはその改竄されている場所。 ではそこはどこだ? しかもそれが一発でわかる方法がなければならない。 ん? 何か聞いた憶えのある話だ。改竄……手を加える……わかる…… ……… …… … 事故が発生する前、まだみんな普通に書道部活動をしていたときの話だ。 俺は谷口の書いた習字を見ていた。 「お前の字も俺とは違う意味で下手だよな」 「うるせーな。人のこと言える立場かよぉ」 口をとがらせる谷口。ふと、俺は何を思い立ったのか、谷口の習字の上からおかしいと思う箇所に ちょこちょこと修正していってみた。 ほどなくして、きれいに整形された字が完成する。 谷口はこれを見て、 「おおっ。結構きれいな字になったじゃねーか。これなら結構いけた評価がもらえるかも知れないぜ」 「習字の合作なんて聞いたこともないがな」 そんな感じで話しているところに、書道部部長(女子)がやって来て谷口が俺の貢献を無視して どうです俺の美麗な字は!とかアピールを始める。 が、あっさりと誰か跡から弄ったでしょと指摘して、驚愕の表情で谷口を唖然とさせた。 「何でそんなに簡単にわかるんだ?」 そう俺が聞いてみたら、書道部部長(女子)はこう答えた。 最初に書いてあったものに、別の人が手を加えればすぐにわかる。一人一人やり方が違うから、 書いた部分には必ず個人の癖が出るから。一部だとわからないけど、全体を見回せばすぐに気が付く。 その指摘に俺はなるほどと感心して―― … …… ……… 「ハルヒ!」 俺は思わず叫びながらハルヒの元に駆け寄り、肩をつかむ。 「……何よ?」 頭を抱えていたのままのハルヒの顔を無理やり上げさせると、手に持っていた手帳を奪い取り、 「いいか、気が付いたんだ。良く聞いてくれ」 俺はそういいながら空白の両開き二ページを開く。片方は空白のまま、もう片方には手帳に付けられていたペンで 一つだけ黒い点を打っておいた。 「この二つのページの違いはわかるよな? 違いはこの点だけだ」 「そんなの見ればわかるわよ」 「そう見ればわかるんだ。だが、二つのページの一つ一つを解析していったら膨大な時間がかかるはずだろ? でも、今これをどこが違うのかすぐに答えられる。この違いがわかるか?」 俺の言葉にハルヒははっと気が付いた。さすがに察しが良い。 「このページに詰まっている情報を1個ずつ見るからダメなんだ。ページ全体で見てみろ。 どこが違うのか一目瞭然。そして、考えたくはないが朝比奈さんが犯人なら時間平面を弄っているはずだ。 なら時間平面を全体から見てみれば、どこが弄られたのかすぐにわかる。弄ったところは確実に違和感が出るからな。 それがどれだけ巧妙に仕掛けてあったとしても、改竄したことには変わりない。それがこの黒い点となる。 お前が探せばいいのはページ全体から見たときのこの黒い点だけだ。これなら探せないか!?」 俺の指摘にハルヒはしばらくあごに手を当てて思案していたが、徐々に表情が明るくなっていき、 「……できるかも。いやいけるわ! 大手柄よキョン!」 ハルヒはまた目を瞑って、時間平面の検索とやらを始める。 頼むぞ、情報統合思念体。少しの間だけはハルヒが無自覚にやったこととして見逃してくれ…… しばらくしてハルヒがはっと目を開いた。何かを見つけたらしい。 「手を出して。あんたの視覚回路に得られた情報を渡すから」 「お、おう……」 俺はかなり嫌な予感が頭の中を駆けめぐったせいで、一瞬ハルヒの手を取ることを躊躇してしまう。 だが、すぐに意を決してその手をつかんだ―― 唐突に俺の脳裏に多数のフラッシュバックが起きる。 火災の起きた女子部員の部屋の中。 誰もない。 いや違う。キッチンに北高のセーラー服を着た人物がいる。 朝比奈さんだ。まるで完全犯罪をたくらむ犯人のように手には手袋が着けられている。 電子レンジに何か細工している光景。 天井に据え付けられている戸棚の包丁の位置を細工する光景。 冷蔵庫を微妙な角度で傾ける光景。 ガス管に切れ込みを入れる光景。 どこかに電話をかける光景――電話機のディスプレイには書道部顧問の名前が浮かんでいる。 ああそうか、女子部員じゃなく朝比奈さんに呼ばれていたのか…… 爆発する電子レンジで首を切り、ふらふらとよろめく女子部員の姿をじっと隠れて見ている朝比奈さんの姿。 ふと何かに気が付き、あわててリビングから出ていき、開きかけていた玄関の扉を閉める。 ――ここで一旦間をおき、またフラッシュバックが続く。 俺が助けた男子生徒が蹴った交通標識の根元に細工する朝比奈さん。 看板に何か細工している朝比奈さん。 トラックの運転手に手を当てて眠らせる朝比奈さん。 ジェットコースターのレールみたいな場所で何かの細工をする朝比奈さん。 ………… ………… ほどなくしてハルヒの手が俺から離れる。戻ってきた視界には、ハルヒの悲しげな表情が浮かび上がってきた。 これで俺ももう言い訳できない。 ――犯人は朝比奈さんだ。時間遡行を繰り返して、【偶然】が起きるように細工している。 だが、俺の頭はまだ拒否反応を示していた。いくらあらかじめ仕掛けを施していても人を殺害できるほどまでの【偶然】を 起こせるようにできるのか? これに対してハルヒは、失望の色に染まった顔を見せつつ、 「できるわよ。時間を戻せるって事は難解もやり直せるって事だから。うまくいくまで数百回でもやればいい。 あたしたちが女子部員の部屋にいったときも、実は時間平面の書き換えがかなり行われていたんだわ。 その過程でドアの鍵が開いていることにみくるちゃんが気が付いて、あわててそれを閉めるパターンへと書き直した。 へんなところでドジッ子ぶりをみせてくれちゃって……」 そう肩を落とした。 そう言えば交差点での事故の直前、一瞬朝比奈さんがいなくなっていた。あの時も書き換えまくって、 一瞬だけ書き換え途中でその場からいなくなることがあったのだろう。 つまり結論を言えば、時間を自由に移動できればそういった【偶然】を装った殺人もできると言うこと――だ。 「もう……言い訳できないわね。あんたも……あたしも……」 「そうだな……」 俺たちはここでようやく観念した。今まで二人ともやはり朝比奈さんが犯人じゃないと信じたかったのだろう。 だが、現実は違った。もうこれは受け入れるしかない。 と、ここでハルヒが立ち上がり、 「落ち込んでいる場合じゃないわ! やることはまだあるのよ!」 そう気合いを込めて言う。 その通りだ。まだ狙われる予定の人がいる。谷口・国木田・鶴屋さん――みんなの命を助けなければならない。 そして、朝比奈さんにこんなばかげた行為を止めさせる。例えそれが未来からの指令だとしてもだ。 ハルヒはすぐに鶴屋さんに何とか連絡を取ろうと携帯電話をかけ始めた。だが、つながらないらしい。何度もかけ直す。 俺も国木田に再度連絡してみる。だがやはりつながらない。 続いて谷口につなげてみたところ――つながった。 『よー、キョンか? なんかあったのか?』 「おい今どこにいるんだ!?」 『おいおい、そんなに焦ってどうしたんだよ。お、そうか、ようやく知ったのか。 ならば聞いて驚け! 今朝比奈さんと一緒に遊園地に来ているのさ! ただ残念ながら国木田もいるけどな』 キョンからの電話かい?という国木田の声が流れてきた。二人ともそんなところにのこのこと出かけているじゃねえよ…… 俺ははっと思い出した。さっきの朝比奈さんの仕掛けフラッシュバック集の中にジェットコースターに仕掛けを しているものがあったことを思い出す。まずい、やばい! 俺はできるだけ事情を複雑化させないよう端的に説明する。 「いいか良く聞けよ! お前らに危険が迫っているんだ。今すぐ安全そうな場所――できるだけ何もない場所に 移動しろ。ああそうだ、特にジェットコースターには絶対に乗るな!」 『今更言ってもおせーよ。今乗っている最中だ。もう出発しちまったしな』 ……遅かった。しかも隣には国木田も乗っている。このままでは二人とも死んでしまう。 いやまだ間に合うはずだ。そうに決まっている。 「何でも良いから降りろ! 頭がおかしくなったフリでもしろ! このままだとお前と国木田が死んじまう!」 『ああん? あの涼宮のヨタ話を信じているのか? あいつが言ってから数日間何にもおきてねーだろうが。 偶然だったんだよ偶然。今更そんなくらい話を引きずっていてたまるかってんだ』 くっそ。話を聞きやしねぇ。そうだ朝比奈さんはどうしたんだ? 一緒に乗っているのか? 『いやー、一緒に並んでいたんだけどよぉ。途中で怖くなっちまったみたいでな。乗らずに下で待っているってさ』 俺が格好良く乗りこなして見せてやる。そうすりゃ、朝比奈さんも俺に対して小さな好意を抱き――』 もうこれはビンゴだろう。朝比奈さんが抱いているのは好意じゃなくて殺意なんだよ。 だが、もう遅かった。ほどなくして、谷口の少々緊張気味の声が聞こえてくる。 『さてもうすぐ絶叫タイムの始まりだ。おお、せっかくだからキョンも臨場感が味わえるように このまま携帯をつなぎっぱなしにしておいてやるよ。俺と一緒に楽しんでくれ』 楽しめるか。死の瞬間なんて! だが、俺の言葉も届かず、ジェットコースターが加速を開始したらしい。激しくぶつかる風の音と 多数の悲鳴が聞こえてくる。谷口と国木田も喜びの入り交じった悲鳴も聞こえてきた。 だが、すぐに別の悲鳴になる。 助けてくれ! おいなんだこれ! 突然浮き上がって! た、谷口助けて――うあっ! 国木田! おい――うおああああああああ! ………… ………… ………… がちゃん。 携帯電話が何かがぶつかった音が聞こえる。それでも通話は切れることなく続く。 ――大変だ! ジェットコースターから誰かが落ちたぞ! ――救急車を呼べ! ――なんなのよこれ! ――ダメだもう! 俺は聞くに堪えられなくなり、こっちから通話を終えた。俺の会話を聞いていたハルヒも絶望に染まった顔で こっちを見つめている。 「谷口と国木田はもうダメだ……だが、まだ鶴屋さんがいる」 何でも良いから俺は気持ちを切り替えたかった。まだ助けられる人がいると、二人の死をごまかしたかったのかも知れない。 俺はすぐに携帯で鶴屋さんにかけてみる。最初は電波すら届かなかったが、ほどなくしてようやくつながった。 『やあキョンくんっ。なんかあったのかいっ?』 「落ち着いて聞いてください。いいですか落ち着いて――」 『落ち着くのはキョンくんの方じゃないのかいっ? 声が震えてしまっているよっ。一回深呼吸してみるっさ』 鶴屋さんの指摘に、俺は一旦冷静さを取り戻す時間を与えてもらえた。そうだ、落ち着いて話さなければ、 相手に伝わるものも伝わらない。 俺はまず確定した事実を伝える。 「部長が亡くなりました。交通事故で俺たちの目の前で。あと谷口と国木田も多分ダメだと思います……」 『そう……』 鶴屋さんの声はどこか悲しげで、その一方寂しげに聞こえた。一緒にガタンガタンと列車の走る音も聞こえる。 振動音から見て鶴屋さんは今列車に乗っているのか? 「次は鶴屋さんの可能性が高いんです。今電車の中ですか? すぐに安全な場所に移動してください。 俺たちもすぐに向かいますから」 『今は電車の中だよ。誰もいない最後尾の車輌に座っている。あはっ、これは狙うなら絶好の機会だねっ』 その口調に俺はぎょっとした。鶴屋さん、あなたまさか…… 『そうさ。もうすぐあたしの前にも現れるんだよね? その死神――みくるがさ』 「……気が付いていたんですか?」 『はっきりとじゃないよ。でもあの子は嘘が凄く下手だからねっ。会ってすぐにどこか普通の人とは違うって事は わかったのさ。でも、みくるがあたしに言わないならこっちから聞くようなことはしなかった。そんな必要もないから』 ゴーッと対向列車が通り過ぎたんだろうか、携帯電話から大きな風キリ音が聞こえてくる。 鶴屋さんは続ける。 『でもこの一週間はさらにみくるの様子は変わった。本当に心のそこから悩んでいるみたいだったよっ。 同時にいっぱい人が死んだ。直感的にわかったね、みくるがこの事件に関与しているって事が。 でもさすがにあたしもこれ以上黙ってはおけなくなったよ。だから、みくるに直接あってケリを付けるつもりっさ』 鶴屋さん……あなたって人は……! だが、今の朝比奈さんの行動は自分の意思関係ない可能性が高い。鶴屋さんの説得に耳を貸すとは思えない。 『……おっと、来たようだよ。お出迎えが』 「鶴屋さん待ってください! せめて居場所を――」 『じゃあ、また学校でね――』 ツーツーツーツー…… 電話がとぎれる。俺は即座にリダイヤルしたが、電源を落としてしまったのかもう通じない。 俺はしばらく呆然と立ちつくしていた。鶴屋さんは理解はしていないが、朝比奈さんが犯人だと気づいていた。 そして、今直接会ってこれ以上の惨劇を食い止めようとしている…… 「……あたしのせいよ」 その会話を聞き取っていたのだろう、ハルヒが地面に座り込んだ。呆然と真っ青な顔を浮かべている。 ハルヒは続ける。 「あたしがあんたに予知能力なんか与えたからこんな事態になったのよ。そんなことをしなければこんな事態には……」 「それは違うぞハルヒ」 俺はハルヒの肩をぐっと持って立ち上がらせた。 そして次に顔を持って、 「いいか? お前が予知能力をくれたおかげで、あの事故を免れることができたんだ。確かに、結局死んだ人ばかりだが、 それでも鶴屋さんはまだ生きている。お前は鶴屋さんに生き延びるチャンスを与えたんだよ! だから、絶対に悪いことなんてしていない! まだ助けられる! 意味の無かったことにしないために 鶴屋さんを助けるんだよ!」 「……でもどうすればいいのよっ!」 ハルヒのヒステリックな声。俺は頭をフル回転させ、 「とりあえず鶴屋さんの場所を確認してくれ。そして、そこに俺とお前を移動させるんだ。SFとかであるワープみたいにな。 それくらいできるんだろ?」 「場所を探せるけど、移動は――可能だけど確実に情報統合思念体に気づかれるわ! 長距離だったら 時間平面上の痕跡は凄く大きくなるから……」 「そんなことはもうどうでもいいんだよ! ばれてリセット上等だ!」 俺の言葉に、ハルヒははっと息を呑んだ。俺はまくし立てるように続ける。 「俺はもうキレたぞ。鶴屋さんをを助ける。今はそれ以外は考えねえ。例えその結果情報統合思念体が 世界を滅ぼしても、朝比奈さんを説得する方を最優先にしたい。そうすれば例えリセットになっても、 次にやり直すときに対応策がわかるってもんだ。ただ待っているだけじゃ何にも変わらないんだよ! この世界がダメなら、せめて次にいかせる結果が欲しいんだ!」 「…………」 ハルヒは俺の言葉をしばらく黙って聞いていたが、やがてふんっと鼻を鳴らしいつも表情に戻ると、 「わかった。あんたの決意にかけてみるわ。でもみくるちゃんをどうやってつもりなのよ?」 「……それは会ってからときに感じたままを言うだけさ」 ◇◇◇◇ 「朝比奈さんっ!」 「――――っ!」 予想外にかけられた言葉に、見慣れた北高のセーラ服に身を包んだ朝比奈さんは声にならない悲鳴を上げた。 俺とハルヒがワープした先は、俺たちのいた場所からかなり離れた線路だった。ちょうど駅と駅の中間に位置し、 辺りには田んぼと点在する民家しかない。人工的な雑音は何も聞こえず、ただ風が草をなでる音だけが耳に広がる。 状況は最悪に近かった。列車に乗っていたはずの鶴屋さんはなぜか線路の横で横たわり、すぐそばには 大きなナイフを持った朝比奈さんがまさにとどめを刺そうとしている。 「ど……どうして……!?」 突然ここに現れた俺とハルヒに、朝比奈さんは理解できないと困惑の表所を浮かべながら後ずさる。 そばには鶴屋さんがいるが、胸が上下しているところを見るとまだ生きているみたいだ。 ただ和服調の服装がぼろぼろになり、全身土まみれになっていることとさっきまで列車に乗っていたはずなのに 停車駅でもないこんな場所で横たわっていることから判断して、列車から朝比奈さんが突き落としたのか? いや、実際に手は加えず、【偶然】転落するように細工が仕掛けられていたんだろう。 俺とハルヒは叫ぶ。 「朝比奈さん、もうやめてください! これ以上人を殺めるあなたの姿は見たくありません」 「そうよみくるちゃん! もうやめて!」 「できません!」 朝比奈さんは即答した。あまりに歯切れのいい回答に俺は驚く。 逆らえないようになっているのか、それともそれほどまでに固い決意で望んでいることなのか。 どっちにしたって構わない。今は朝比奈さんと止めて鶴屋さんを救えりゃなんでもいい。 俺はやぶれかぶれで知っている情報を出しまくる。 「俺は知っています。朝比奈さんが未来からやって来たエージェントであることも、たまに送られてくる指令には 絶対に逆らえないものがあるって事も。それをふまえた上でお願いしているんです! もうこんなことは!」 俺の言葉に、朝比奈さんは仰天し、 「ど、どうしてそんなこと知っているんですか!? それに突然ここに現れたり、以前も死ぬはずだった人を 助けたりして、キョンくんはいったい何なんですか!?」 「俺のことはいいんです! 説明して止めてくれるなら、後でいくらでも説明します!」 「でも、キョンくんが何者でもあたしは自分の任務からは逃れられません! やるしかないんです!」 「理由は何ですか!? 一体どうしてこんな事をするひつようがあるんですか!」 俺の問いかけに、朝比奈さんはうつむいて、 「鶴屋さんはあの事故で死ぬはずだったからです。いえ、鶴屋さんだけではなく書道部の部員やキョンくんの お友達たちも。それが既定事項なんです。絶対に変えることのできない事。これを変更してしまえば あたしたちの未来はなくなってしまう。他に選択肢はありません」 「なぜですか!? 鶴屋さんたちが一体何をするって言うんですか!?」 朝比奈さんはちらりと息も絶え絶えの鶴屋さんの方に視線を向けると、 「鶴屋さんは鶴屋家という大きな勢力の次期当主です。そして、やがて機関と呼ばれる涼宮さんを監視する 組織を作ります。その存在はあたしたちと大きく敵対することになるんです。車にはねられるはずだった人も そうでした。彼も機関で大きな役割を果たすことになります」 機関――まさか超能力者がいないこの世界でその名を聞くことになるとは思わなかった。 鶴屋さんが機関を作る? 確かに俺の世界の古泉は鶴屋家は機関に関わりがあると言っていた。 しかし、なぜ機関を潰す必要があるんだ? 俺の世界では仲良くとはいかないが、共存はしていたはずだ。 いや待て。朝比奈さんの言う機関と俺の知っているそれでは決定的な違いがある。それは超能力者の存在、 つまり神人を倒すという役割。未来人にはそれができないから、機関にやってもらうしかなく、潰すことはできなかった。 だがここでは違う。消すべき閉鎖空間も倒すべき神人もその役割を持つ超能力者もいない。 「機関は情報統合思念体と結託して涼宮さんが能力を自覚した場合、涼宮さんを排除する取り決めを持っていました。 でも、あたしたち未来には涼宮さんは絶対に必要だったんです。細かい点ではあたしも知らされていません。 ですが、涼宮さんは絶えずあたしたちの未来への道を引き続けました。だから、排除されては困るんです。 そう言った思想を持つ組織もあってはならないんです、あたしたちにとっては」 朝比奈さんの言葉に、俺は三者竦みという言葉を思い出していた。完全ではないが、情報統合思念体・機関・未来…… これらは大きな力のバランスを取りつつ成り立っていたのが俺の世界だった。どれか一つでもかければ バランスが崩壊し、どこかが暴走する。前回は機関で、今回は未来――そういうことか。 「ですが、不幸な事故――あのトレーラーと軽トラックの接触事故で鶴屋さんは亡くなるはずでした。 実はこれも未来の別の人が起こしたものなんです。あそこで絶対に鶴屋さんに死んでもらわないとダメだったんです。 その結果、機関の誕生は大幅に遅れ勢力の小さいものになり、あたしたち未来は機関に対して常に優位性を保持できたんです。 なのに……キョンくんがそれを阻止しました。あの時TPDD何度もやり直したんです。でもキョンくんは絶対に止めました。 やむえずあたしたちは方針を変えて、つじつま合わせをすることにしたんです。別の理由で死んでも同じ事でしたから。 それが今回のあたしが未来から受けた指令。偶然に見せかけて、既定事項で死ぬはずだった人を全て抹殺すること。 訳がわかりません。どうして起こることが事前に予想できたんですか? TPDDも持っていないはずなのに!」 「……あたしが予知能力を与えていたからよ。二回限りだけどね」 ここに来てハルヒが口を開いた。この言葉に朝比奈さんは唖然と口を開け、 「涼宮さん……自分の能力を自覚して……」 「そうよ。あたしはあたしがどういう存在なのか知っているわ。全部は知らないけど、それが原因で 情報統合思念体から疎ましく思われていることも理解している。キョンはあたしが予防措置のとして持たせた 二回の予知能力を使ってその既定事項とやらを回避させたのよ。最初は自動車にはねられるはずだった男子生徒。 次にあのトレーラーとの大きな事故をね」 「……そんな……そんな事って……じゃあもう……」 ふるふると朝比奈さんは首を振った。さっきまでの話だと朝比奈さんもハルヒの力の自覚は 情報統合思念体が地球を滅亡させるきっかけとなると理解しているようだ。 ハルヒはきっと朝比奈さんに鋭い視線を向けると、 「みくるちゃん。あたしは本音が聞きたいの。こんなことしたいのかどうかって。安心して。 みくるちゃんにかけられていた言葉の制限はさっきあたしが全部解除したわ。好きにしゃべれるはずよ」 「えっ……あ、ああ……」 こいつ禁則事項を解除していたのか。さすがだよ。 ハルヒは一歩前に踏み出し言う。 「宣言するわ。あたしは絶対に諦めない。情報統合思念体だろうがなんだろうが、あたしは決して屈しない。 試行錯誤も模索でも何でもやって絶対に進むべき道を作り出してやるつもりよ! 未来の都合なんて知ったこっちゃないわ。 あたしはあたしが思うように生きていく。その時みくるちゃんもそばにいて欲しいのよ!」 俺もハルヒの横に立ち、 「朝比奈さん! あなたは書道部での活動は楽しかったって言いましたよね! あれは嘘じゃなかったはずです! それに鶴屋さんに対しての感謝の言葉もです! だから拒否してください。無理ならハルヒが何とかしてくれます!」 俺の言葉につられたのか、鶴屋さんはすっと手を朝比奈さんに伸ばし、 「みくる……一緒に行こう……みんな待っていてくれているんだよっ……」 三人の言葉に朝比奈さんは半分涙目になっていた。 ――しかし、それでも首を縦には振らなかった。 「あたしは99%今回の任務は嫌でした。あたしは鶴屋さんに心の底から感謝していたし、 書道部での活動も凄く楽しくてそのまま何も起こらずに続いていけばいいとも思っていました。 でも残り1%の自分は違うんです。やらなければあたしとあたしの未来が消えてしまう。そんなのはイヤです。 嫌なんです! だからこうするんですっ!」 朝比奈さんはナイフを振り上げる。ダメだ朝比奈さん! やめてくれ―― 飛び散る鮮血。俺はその現実に激しいめまいを覚えた。 胸にねじ込まれたナイフが北高のセーラー服を汚し、ふらふらと鶴屋さんのそばに倒れ込む。 ――そう朝比奈さんは自分の胸をナイフで突き刺したのだ。なんでだ!? 「朝比奈さん!」 「みくるちゃん!」 俺とハルヒは倒れ込んだ朝比奈さんの元に駆け寄る。胸からは多量の出血が始まり、口からも漏れ始めていた。 「みくるっ……みくるっ……!」 鶴屋さんも酷い重傷の身体を引きずりながら、朝比奈さんにすがりつく。 何でこんな事をしたんですか!? 朝比奈さんは俺たち三人にニコリと力なく微笑み、 「これで……残りの1%の自分の消せ――ました。これでいいんです……やっと99%の自分が100%になれたから……」 「こんなの違う! こんなの間違っている! あたしは認めない! 絶対に死なせない!」 そう言ってハルヒは朝比奈さんを治癒させるべく手をかざして…… それと同時だった。突然激しい地鳴りが始まり、地面どころか空間も歪み始める。 これってまさか!? ハルヒはがっくりと肩を落としていった。その目にはいつの間にか涙が浮かんでいる。 「情報統合思念体の……排除行動が始まったわ……」 「そうか……ちくしょうここに来て……!」 俺は地面を拳で殴りつけた。覚悟の上だったはずだ。でも、こんなところで終わりなんてあんまりじゃねえか…… ハルヒは袖で涙を振り払うと、すっと立ち上がり、 「リセットするわ。キョン、みくるちゃんと鶴屋さんをお願い……」 そう言って目を閉じて情報操作を開始する。 朝比奈さんと鶴屋さんは予期せぬ状況に不安げな表情を浮かべ、 「なんなんですか……どうか……したんですか……?」 「キョンくん……これは……」 俺はそんな二人を抱き寄せると、 「大丈夫ですよ。もうすぐ何もかも無くなります。そして、次に目を覚ましたときはきっとみんな平穏無事に 学校ライフを満喫しています。俺が保証しますよ」 朝比奈さんは俺の言葉に目に涙を浮かべて、 「そっかぁ……次に目を覚ましたら、あたしみんなとずっと友達でいられるんですね……ふふっ……」 そうですよ。あなたはSOS団のマスコットキャラであり、俺の癒しの存在です。他のステータスなんて入りません。 未来人であることを押しつけてくる奴がいたら、そいつは窓から投げ捨ててやります。 と、ここで鶴屋さんがすっと頬に手を当ててきて、 「キョンくんは……ちょっとハルにゃんやみくるとも違うね……見ている方向が違う……っさ。 キミの瞳の中には……もっとずっと先の明るい未来が見えている気がするよっ……。でもハルにゃんはまだ迷っている…… キョンくん、きちんと面倒……見てあげないと駄目にょろよ……」 ええわかっています。あなたはSOS団名誉顧問。あとハルヒのことは任せてください。 あいつは俺がきっちりと導きますから。 やがて地面の振動を飲み込むように、世界が暗転し始める。 その時、ふと気が付いた。数百メートル離れた先に立っている北高のセーラー服を着た一人の少女。 長門有希だ。 きっとパトロンの命令でここに駆けつけたのだろう。 待ってろ長門、次はお前をこっち側に引き入れてやるからな―― ……… …… … ◇◇◇◇ 次に気が付いたときにはあの灰色の教室――時間平面の狭間にいた。 俺はだらんと力なく壁に寄りかかっている。 すぐ隣ではハルヒが同じように呆然と俺に頭を寄せていた。そして、つぶやくように言う。 「……疲れた」 「そうだな……」 「……みくるちゃんとはあんまり遊べなかったな……」 「次はきっとできるさ……」 俺たちはそのまま一眠りすることにした。さすがに色々あり過ぎて今回もくたびれちまったからな。 意識が闇に落ちていく中、俺はふと考える。 機関と未来人の均衡関係。やはりこの二つは並立して存在してこそ成り立つものなんだ。 そうなるとあと残りは一つ。全ての頂点に位置し、ハルヒの力の自覚を決して認めない最大の敵。 奴らを何とかすれば、きっとバランスの取れた世界が切り開けるはずだ―― 涼宮ハルヒのSS 厳選名作集 長編 涼宮ハルヒの軌跡
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涼宮ハルヒの憂鬱 【作品名】異世界人こと俺氏の憂鬱 【作者名】魚乃眼 【URL】https //novel.syosetu.org/13591/ 【原作】涼宮ハルヒの憂鬱 【地雷条件又は注意事項】オリ主 原作知識あり 能力だけクロス(ハンターハンター) 【あらすじ・概要・感想】 涼宮ハルヒに呼ばれた異世界人の主人公がSOS団に所属する 上でも書いたように原作知識ありの、なぜか念能力が使える状態という地雷設定だが 割とうまく絡めててそれなりに読めるものに仕上がってる 更新頻度も早く文量もそれなり、現在消失篇終了
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「ねぇ、キョン。あんたポケモン持ってないの?」 近頃は最新型パソコンと睨めっこバトルをくり広げている団長様が、やおら話題をふってきた。まだまだ嵐の前のナンとやらを堪能していたい俺は、何をやらかすか分からんハルヒの目論見をできるだけけしかけないように答えた。 「あんな面倒なものは小四で卒業した」 「私、昨日ゲーム機ごと買ったんだけど……あんたもやらない?」 何故たった一言返しただけでここまで話が進むんだ?…まぁ、ゲームごときで深刻に考えるのもどうかしてるが、ハルヒはここ最近ネットばかりしているからなぁ 「昔は誰でもやったことあるわよね、どぉ?みんなで対戦とかやりたくない?」 「ふぇ~ゲームですかぁ…」 ゲームにまで手を出したら、今流行りのフリーター万歳人間になってしまうのではないか…仕方ない。ハルヒにこんな話をしても無駄だと思うが、たまには世界の平穏の為に働いてみるか 「…ハルヒぃ……こんな話を…知ってるかぁ?」 「な、何よ変なしゃべり方して」 「ポケモンシリーズの初代主人公は死んでいるらしい。」 「!!」 思った以上にリアクションがでかいな。気を悪くするなよ、お前の将来の為だ。 「し、知ってるわよ。金銀で話かけても『………』ってヤツでしょ?そんなんで死んでるって決め付けるなっ!!」 「マサラタウンの母親に聞くと、何か月も音信不通らしい。それに、ゴースト系のポケモンばかり出てくるしな」 「………。」 「これ以外にもポケモンには不気味な噂が沢山あるんだぞ?」 それでもやりたいか?…と言うのはまだ速いか。とりあえず、この意外と怖がりちゃんには精神的に死んでもらおう 「GBA版の伝説ポケモンで、レジアイス、レジスチル、レジロックっているだろ。」 「あれ、第二次世界大戦で死んだ障害者の権化らしい」 「ちょっと!!今日のあんたおかしいわよ、酷いじゃないッ!!」 「ホウエン地方って、九州がモデルだろ?」 レジアイスは長崎 レジスチルは宮崎 レジロックは大分 どれも原爆があった場所だ …朝比奈さん、泣かないで下さいよ。ハルヒの怪しい力でみんなにとばっちりがいかないように頑張ってるんだから 「ふぇ…」 ちなみに今呻きをあげたのは朝比奈さんではなく、団長様である 「奴らの祠にある文字は、病気の人用の『点字』だしな」 「…もう、止めた方がいい」 今から、森の洋館について話そうかと話を繋げようとする前に長門が教えてくれた。ハルヒが泣いてる。 「ふぇ…ふぇ…クスン」 萌えた。 「こんのバッカキョーンッ!!!買ったばかりなのにー!!もうできないじゃないのぉ……」 「ロトムってポケモンが―――」 「いやぁぁぁぁぁぁッ!!!」 古泉はニヤけているが、いいのか?閉鎖空間が発生しそうだか? 「おや、貴方はそんなつもりであんな話をしたのですか?」 「…スマン、まさか泣くとは思わなかった」 ハルヒは腰を抜かしたらしく、長門におぶってもらいながら坂を降る。怖がりすぎだ 「ゆきぃ…トイレ」 「ハルヒ、後ろにピカチュウが――」 「いやぁぁぁぁぁぁッ!!!」 失禁するなよ? ただでさえ、下校中の北高生に見られてるんだから。それにしてもお前がそんなに怖い話が苦手だなんて知らなかったよ 「今日の彼は a bully。私も苛められたい……」モミモミ 「ちょっと、有希。お尻揉まないでよーオシッコ出るぅ」 …ほら、貴方の後ろにもピカチュウが――